Sankou2006-56

早月尾根から立山縦走

日程  2006年 8月10日(木)12日(土)         北アルプスの大展望と
費用  合計 約43910円  小屋2泊:16400円、      岩稜歩きを満喫
東京=富山
夜行バス4800円、富山=市=580円、
上市=馬場島=タクシー6730円、室堂=富山=3500円、富山=東京=11900円。

参加者  高橋(単独行)。

行程  8/9/夜) 東京駅南口中央郵便局前 23:30 ⇒(高速バス)⇒ 5:20富山駅。
       8/10木) 電鉄富山駅 5:44 ⇒(富山鉄道)⇒ 6:05 上市駅 6:30 ⇒(タクシー)⇒            7:00 馬場島 7:55 → 早月尾根登山口 8:00 → 14:50 早月小屋(泊)。 
       8/11金) 早月小屋 5:50→ 10:45 剱岳→ 剱沢小屋15:50→18:30 内蔵助山荘(           泊)。

8/12(土)  内蔵助山荘 6:55 → 8:25 大汝山 8:35 → 9:00 雄山・立山神社 9:35 →10:15 一の越 10:40 → 11:25 室堂 14:30 富山 15:40 ⇒ 17:45 越後湯沢 18:00 19:20 東京着。

■      山行記

剱岳にいつか行ってみたいと思っていた。早月尾根の特徴である「馬場島登山口から剱山頂の標 高差2240mは日本一」と「北アルプス3大急登」は早月小屋へ泊まり、ゆっくり歩けばクリアできるので、静かな歩きを楽しめる早月尾根から剱岳を目指すことにした。

8/10木 晴

配していた台風7号が太平洋岸に沿って北上してくれ快晴となる。 タクシーで橋を渡りながら剱岳の全容を見る。 「あそこまで行くのよね」。 馬場島で朝食後、登山口から20分間の急登は体調を推し測りながらゆっくり登る。 「50分歩き10分休み」の繰り返しで登るつもり。松尾平の平坦地でペースを上げる。 9時、ヤマタノオロチならぬ「ヤマタの大杉」のようないくつにも幹が割け枝を張るでっかい立山杉を見上げながら休憩。 陽射しが強烈でサングラスをかける。ザックの底の方から長袖を出すのが面倒で半袖のまま歩く。 虫除け液がザックの収納したはずの場所に見当たらないのは健忘症かも。 昨日右人差し指に縫針を刺した箇所の腫れと痛みがひどく、明日岩場で指が使えなくなると大変なので不精せずに傷の手当をする。 こましゃくれた感じのするミヤマホツツジがうっすらピンクを帯び満開。 11時半から30分かけて昼食。 頭の上は青空と太陽なのに谷筋から雲が湧き視界不良となる。 12時半1800mを通過。 コイチヨウランが群生し黄色のタマガワホトトギスをいっぱい見る。山で見るのは初めてで嬉しい。 ギザギザの小窓尾根の岩壁を左前方に見ながら歩く。 小屋の手前の崩壊地にロープがあり通過しづらい。 ここで馬場島を朝1時に出たという2人が下山してくる。 これですれ違った人は全部で6人だけ。 14時50分早月小屋に入る。 2日間水場がないので飲料水3.5Lを持ったが重い。 小屋で2L700円で買えるらしい。 早月尾根のコースタイムはガイドブックによっていろいろだが、私は私なのだからまあこんなものでしょう

私の単独山行では午後3時前に小屋に入るなんて稀。 雲の晴れる夕方5時まで寝るつもりで珍しく缶ビールを飲む(小500円、単独山行でビールを買ったのは初めてだ)。 寝るのがもったいなくて16時に起き展望地に出向き、真っ青な空のもと、小窓尾根のニードル・マッチ箱・小窓の頭に続く剱岳から別山尾根へ連なる豪快な岩稜と立山・奥大日岳の優しげな稜線に見入る。 ここから小窓の王やドームは剱尾根に隠れて見えない。夕食は美味しいカレーに野菜のお煮付けと山芋サラダ。木質系の小屋(定員50人)に登山客はわずか3人。明日から混むと聞く。平日来た甲斐があるというもの。しかも天気も上々。他に富山TV局の数名が早月小屋の主人(小屋を創設した故佐伯伝蔵氏の息子さんが富山県警山岳警備隊を早期退職して今年から小屋の経営主)の取材で宿泊している。明日のため夜空は満月に満天の星のはずだが8時消灯就寝。星座盤の出番無しで残念。


■         早月尾根から小窓尾根を望む

8/11金 晴

小屋を4時半に出ようとしたが4時50分起床。 朝食すし弁当を小屋で半分食べて5時50分出立。快調に高度を稼ぐ。 ずっと小屋が見えている。 昨日はそうでもなかったが200mおきに設置されたステンレスの道標がうっとうしい。9時朝食。登山道が50-60cm途切れている所ではボルト1本と鎖があるがもう1本ボルトが欲しいと思う。ここ以外は特に問題なく進む。振り返ると登山道がクネクネとけっこう平坦そうに見えるのが不思議である。雪渓脇の草付に花も楽しめる。山頂直下の「カニのハサミ」が何処なのかよく分からず通過する。別山尾根からの登山者が見え「人がいる!」 小窓尾根を眼下にすると、剱岳山頂2999mである。 早月小屋が見える。 霞んでいるが富士山がかすかに見える。その左の山塊は2年前に登った蓮華岳らしい。別山尾根の奥は槍・穂高。 360度パノラマ眺望も青空があればこそでワクワクする。

カニのヨコバイ・前剱・一服剱と下りてくる。 一服剱で「何処まで」と聞かれ、剱岳山荘を見やりながら「内蔵助山荘」と答えるものの、眼前に聳える別山をみてこれからあれを登るのかいなと思う。 「どこにある小屋? 無理でしょ。剱岳山荘に泊まったら」の声を後に下山を急ぐ。でも悩む。 剱山荘の新築工事が進む横を通り過ぎてから「あと3時間歩かなくちゃ小屋に届かないから、ここでのんびりするのも良いよね。車百合やハクサンフウロなどの草原もゆったり楽しみたい。必死に歩くだけではつまらないでしょ」 とだんだんと戦意喪失。雪渓を通過する度に雪をほじり日焼けの腕を冷やし、小さな池に寄り道して草地斜面から剱岳山荘に入る。

          剣岳山頂にて

混むらしいが女一人泊めてくれる。内蔵助山荘の予約取り消しの電話をしたいと言ったら、受付をやっている小屋の主人に何処からきたとか何時に出てきたかとか聞かれ、「予約している所に泊まってあげて。6時過ぎても大丈夫。電話してあげる」 私は「エッー! 6時半になっちゃうし小屋に迷惑かけるし」とニコニコ応じる。 今、小屋から見る別山には、一服剱で見たのとはまた異なる、ちかしい感じをもち登れそうなのだ。 計画遂行とばかりに「行くか!」と思う。「これから向かう」という電話をかけてくれる。 「大丈夫、行けるよ」という小屋の人達にそそのかされ3時50分小屋をあとにする。 体力も気力も心肺機能も低下しているのに脚だけは前へ前へと勝手に動いてくれる。 別山まで標高差340mを登れば剱岳八ツ峰の素晴らしい景観が手に入る。 右に室堂、左に後立山連峰を見ながらの1時間半の尾根歩き。 地獄谷から吹き上げる硫化水素の臭いが強く深呼吸する気になれない。 内蔵助山荘の手前でオレンジ色の夕陽を鑑賞してカメラを構える。 さすがに疲れ過ぎ食欲無し。 それでも夕食は魚のフライと木の芽てんぷらと盛り沢山で美味しく全部平らげる。 味噌汁を3杯いただく。 この空いている小屋(定員120名)はお勧めだと思う。 雪渓を抱えているので水も豊富でトイレもきれい。

小屋の主人佐伯氏から明日下る予定の東一の越方面の情報を得る。 一昨日黒部から東一の越経由で登ってきた人が黒部タンボ平の潅木地帯はずっと薮漕ぎを強いられ雪渓の1つは捲いたという。「花畑がきれい?」と首を傾げられる。 ナナカマドのトンネルもあるがそこもふさがっているらしい。彼は「私が会社勤めの時はあの登山道の枝葉を払っていたが、現在どこがやっているのかな」と言う。 登山道に手が入っていないらしい。 念のためアイゼンは右足だけ持参しているが、「一人で薮漕ぎ」は嫌だな。 宿泊客は20人ほどいたようだが、4畳半に一人で泊まる。ワォー個室だよー。 消灯後外に出たら星無し月無し。「何で?」

8/12土 曇り時々雨

4時半大雨が降る。天候が崩れるのは午後遅くからの予報なのに暗然となる。 小屋は御来光の撮影を狙っている登山客が多い。 6時過ぎ雲が流れ青空がのぞく。御来光が射すはずの爺ガ岳や鹿島槍ガ岳が黒いシルエットで浮かび上がりなかなかの光景。 このまま天候がもつのかと考えたのはとても甘い見通しで、小屋を出る時には一面ガスの中。 視界不良の中で黒部湖に降りる登山者は私一人だろうし、東一の越から先は薮漕ぎでずぶぬれになり、なおかつナナカマドの枝なんかを踏みしだいて歩くことになりそうなので、下山予定をラクチンな室堂に変更する。

大汝山3015mはこの縦走の最高点なので往復する。岩塔からは風雨で何も見えない。落石を心配しながら降りて一の越に到る。槍・穂高・笠ガ岳が雲間から束の間見える。室堂ターミナルまで10分という所で激しい雷雨にあう。寒気団の通過か、小豆大の霰が地面で弾んでいるすごさ。遠くで落雷の轟音。怖いが落ちないのを祈り歩くしかない。バスから鍬崎山に稲妻が走るのを見る。今頃東一の越で往生していただろうと思うとさっさと下山して正解である。大雨の影響で山沿いを走る列車の遅延がひどく、富山駅は乗客でごった返している。JR駅員の対応は悪い。室堂で情報が分かったら扇沢に出たのにと思うが後の祭り。高速バスも空席なし。3時間45分遅れで入線した特急「はくたか」に乗る。 登れて嬉しい。 


         別山から眺める剣八ッ峰

inserted by FC2 system