集中山行  沢コース
奥秩父 ワレイワ沢遡行
日程:2007年9月16日
参加者:L佐藤、SL桑村、高橋、渡辺
コースタイム
槌打キャンプ場6:00==6:25秩父鉄道三峰口駅(細谷さんを送る)==6:45大血川林道崩落通行止め地点─(林道歩き)─7:05鉄橋(本流入口)─7:30タカノス沢出合(入渓準備)8:00─8:23石楠花沢出合(ワレイワ沢に入る)─9:00ゴルジュを抜ける─9:29大岩─10:20三俣でやや迷う─10:50杉の植林の過ぎたところ(昼食をとり引き返す)11:30─12:10クライムダウン12:20──13:00ゴルジュを通過─13:16石楠花沢出合─13:30タカノス沢出合─(登山靴に履き替え)14:05─14:35林道駐車地点==渡辺さんを三峰口へ送り、道の駅大滝で軽食後──16:00槌打キャンプ場【泊】

《山行記》

煮込みうどんを食べて朝6時、車で槌打キャンプ場から割岩沢に向かう。急用のできた細谷さんが三峰口駅で降りる。荒川から支流の大血川沿いに進む。秩父に落ちのびた平将門が討たれた時(史実は下総で940年討死)、桔梗姫ら99人が自害して7日7晩赤く川を染めたという伝説が大血(おおち)川の物騒な名の由来だ。大血川線林道が台風9号により崩壊して車輌通行禁止になり、予定の少し手前から歩く。「通行止」の鉄パイプをくぐるとすぐ左の法面がばっさり崩落している。この林道は2003年秋に開通したが、黒岩山(霧藻が峰)斜面を切り崩し沢を埋ずめて無理やり開通させた林道のせいだろう、よく通行止になるらしい。地元民はともかく、登山者はこの林道が無ければないでそれなりの計画で山に入るだろう。山を歩くと環境破壊の工事を目にする事が多々あり、登山も政治と無関係ではない。

林道は右斜面からの鉄砲水によってひどく波うち抉られひび割れ、路体崩壊のすごさは直下型地震が襲ったかのようだ。そんな林道を10分ほど歩くと大きなヘアピンカーブに出会う。そこを右へ曲がらず正面の草地へ入る。ここが西谷ゲートで、西谷に入る作業道の3本の橋を渡りながら細い雑木林の道を歩くと貯水槽のある草地に出る。ここで入渓支度。

7月7日に参加した沢教室のシダクラ沢と異なり、今日はネオプレンソックスと渓流シューズを履き、ネオプレン製スパッツを着け、ヘルメットにハーネスまでつけて、全部細谷さんと深沢さんからの借物なのだが、完全武装だ。装備のゆるみ等を皆が点検してくれる。私はシダクラ沢の時今度は中級向けの沢に行きたいと書いたのだが、中級教室ではなく早くも実践になり緊張している(本当に!)。今日のワレイワ沢は、集中山行のDコースに私が申し込んだので、田口さんが大きな滝がなくて初級の私でも行けそうだと選んでくれた沢だという(ガイドブックによる難度は2級・初級)。私は歩くだけで精一杯でコースや渓相を観ている余裕はない。遡行記録というより感想文しか書けないから安全と楽しさが伝わればいいなって思う。

タカノス沢出合で入渓準備をします

8時入渓点からすぐの堰堤を越えて岩のゴロゴロしている谷を歩く。トップの桑村さんの次に高橋が入り渡辺(元嗣)さんとリーダーの佐藤さんが続く。石楠花沢とワレイワ沢の出合いを過ぎ、両岸に岩壁が迫るゴルジュ帯(狭まった峡谷の意、更に狭い岩の溝はルンゼとかガリーとかクーロアールと呼ぶらしい)の小滝をいくつか越す。大岩を越え苔むす薄暗さを感じる沢を進む。出会う淵はいずれも水色で小さいが、大岩の先のm滝は底の深そうな淵でコバルトブルーをしている。この滝は右から越す。明るい広々とした感じの流域に出る。緑と青の天蓋が大きく広がり気持ちが伸びやかになる景色に感動する。ここまで登って手に入れた絵だからこそかもしれない。豊かな水量が描く水飛沫や滝がきれいだ。私と同じように水が踊り跳ねている。

急流に浸かっている岩は滑らないが中途半端に水から出ている岩を掴もうとするとバクテリアや苔などでヌルヌルしている。流されそうになる水流の早さとか、足を取られずに安全に歩けるのはどんな流れなのか、水の抵抗を受けないような足の置き方とか、見えない水中の石をどう踏んだら転ばないで済むのか、石から石へ飛び移るのに自分なら安全圏は最大どの位の距離か、いろいろ確めながら歩く。でも転んで全身水に浸かったり膝を岩にぶつけたりする。

ゴルジュは厳しく岩が迫り、水量も多く厳しい登りです

 なかなかの水量と登りです

4つくらい-m滝を越してくると、垂直に落ちるm滝に出会う。捲くか攀じるか、桑村さんが判断する。滝の右の岩壁を渡辺さんがロープを持って登る。その登りをしっかり観察して自分はどう登るか考える。佐藤さんは左岸の高捲きを偵察にいく。私は渡辺さんが投げ下ろしてくれたロープをハーネスに付け慎重に登る。ロープが無くても何とか登れそうでもあるが、桑村さんに「岩を登るのに危険なことはしない。絶対に」と強く言われる。3本の沢の分岐点に出て中央の沢を進む。傾斜は緩やか。渡辺さんは桑村さんに「ここは右を行くけど、滝を直登しても良い」と言われ難しいルートを選って楽しげに歩いている。桑村さんを追う私の後ろに佐藤さんがついてくれ助言してくれる。

9:26

水量が多くヘズリに慎重になります

水量が多く、苦戦します。このままでは稜線への取り付きにはかなり遅くなりそうです。槌打キャンプ場へは18:00頃になってしまいそうですので、帰りの沢下りの厳しさも考慮すると早めに撤退することにし、昼食で腹ごしらえします。

3時間遡行して杉の植林の地点に到達した所で、このまま進むと下山が夕方になってしまうので、リーダーが時間切れを宣言し、ひどく困難なところが無いのでこの沢を下降することを決める。時間で沢を抜ける予定だったのだが、水量は多いがやはり私が遅いからだ。渡辺さんが残念そうな顔をしている。私はもう1時間先に進んでから撤退したかったが、でもほぼ満足する。ゆっくり休み昼食をとる。ここまで必死で上がってきたので樹幹から覗く青い天空をゆったり見上げる。至福のひととき。白湯がおいしい。足回りの装備が良いのでさほど寒くならない。登りでロープを出したm滝(崖はmはありそうだったが)で私をどう安全に下ろすか思案している桑村さんに訊かれ「懸垂下降はやったこと無いけど、光沢寺でトップロープで下りるのに慣れているし、プルジックなら本で独習したからできる」と漫才みたいな私の返答。「懸垂下降を習っていないヒトが沢に来るなんて」ということらしいが、懸垂下降を習得する機会はもてなかった。今新しいことを体験できる楽しみがある。登りであの滝のホールドの位置を大体記憶しているから怖くはないし、それにロープで安全が確保されれば完璧で安心と内心思う。佐藤さんもあの滝を降りたほうが捲くより安全と言う。渡辺さんはロープ無しでも降りれる。

クライムダウンで先頭を桑村さんが務めます

高橋さんは桑村さんが固定したロープをブルージックで下ります。

11時半下りに掛かる。桑村さんが右岸左岸を選んで降りる。けっこう急斜面でふかふかした腐葉土や石で滑りやすい。いよいよm滝に出て、ロープを立木にかけエイト環を通し桑村さんが降りる。目の前で見るのは初めてで興味津々。次に私がプルジックをセットして下りる。淵まで下りてから、滑らせる時だけ結び目を操作すれば良いといわれる。そうか、そうだよね、おかしいと思った。私はプルジックの結び目が固く締まりすぎる気がして左手でずっと結び目を掴んでいて、右手主体でホールドを探して下りたが、やはり「百聞は一見に如かず」である。

最後は渡辺さんが下り、ロープを回収します

沢の下りは登りより高度感を感じます。下りるルートも登るよりはるかに難しく感じます。

堰堤まで下りてきて装備を解く。きれいな渓谷が気に入りもう一度チャレンジしたい。一人でも行けそうなんだけどな、甘いかな、甘いよね。もっと早く歩けるように日常的にトレーニングしなければと反省しきりである。温かい陽射しを浴びながら車の所まで戻る。パーティーの3人にすっかりお世話になる。私には無理かなと案じつつこの山行Dコースを申し込んだのだが、2日間無事に岩山と沢と両方楽しめ、新しい体験を通じ少しレベルアップでき、槌打キャンプ場では皆と交歓でき、楽しい集中山行である。運営委員の皆に感謝!感謝!である。

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