山歩きのためのロープワーク

 講習の内容は、縦走、ハイキング時に役に立つロープワークです。主に、山歩き中の岩場、鎖場での安全な通過法や仲間のフォーローの方法、急な斜面での下降法、また簡単な引き上げの方法を学習します。

 以上の方法を身に付けたからと言って、山歩きが全て安全に出来ると言う事ではありません。ロープを使った安全確保には、基本的に強固な支点が必要です。岩登りと異なり山歩きの途中で使える支点は、自然物(木や岩等)しかありません。また、山歩きの装備は、本格的な岩登り用の用具を用意する事はありません。従って、限られた装備によって身近にある自然物を利用した方法での安全確保しか出来ません。山歩きの基本は歩く事ですから、多少の岩場や急斜面でも補助なしに安全に歩けるように普段から体力と歩く技術を身に付けておくことが大切です。

 

T 覚えておきたいロープの結び方(結びは色々な呼び方が有りますが、一般的な呼び方を使用)

@     8の字結び
通し8の字結び

Aダブルブーリン結び

Bマスト結び(クローブヒッチ、インクノット)

カラビナへ結ぶ場合(片手でも可)


立ち木等への結び方

C半マスト結び(イタリアンヒッチ、ムンターヒッチ)
懸垂下降に使用する場合の注意点
   手で握る側のロープは、必ずカラビナのゲートと反対側になるようにする。
   カラビナは、下のカラビナのようにHMS型(洋梨型)を使用する。




Dプルージック Dクレイムハイスト Eマッシャー
上の三つの結び方は、総称して「フリクションヒッチ」と言われ、結び方も簡単で用途の広い結びですので、是非覚えて下さい。

Gカウヒッチ
スリングを立ち木やハーネスに固定する時などに利用する。

Hインライン8の字結び

ロープをフィックスする場合、後続のために結び目を作る最適な結び方。上下があるので注意。

U フィックスロープの設置

  潅木に末端を直接固定      8の字結びによる固定        8の字結びによる固定





中間支点の設置

スリング、カラビナ+マスト結び 直接潅木に巻いて(マスト結びが有効)
インライン8の字結びにより手掛かりを作り、潅木にフィックス

V 簡易的な引き上げ法(完全な宙吊り状態では、使用不可)

クレイムハイスト(マッシャーでも可)
をストッパーとして使用
 半マスト結びでの引き上げ
簡単、確実で左と同様にストッパー設置も可

W 下降

上記の技術は、斜面を安全に下降する時や登る時に役立ちますが強固な支点が必要です。また、このテキストで説明する方法は、手足の四点支持でなければ登れないような急斜面を前提にしていませんので注意して下さい。

X 自然物を利用した簡易な確保法
立ち木を利用

二重にすると制動力が高まる

岩角を利用

この方法は、歩行中岩場や急斜面で客の安全を確保するためにヨーロッパのガイドが頻繁に使う方法です。

支点になりそうな自然物で、ある程度強度があると判断すれば何でも利用します。鎖場や梯子に設置されたアンカー等も利用できます。その場で何が利用出来るかを素早く判断する、柔軟な思考が必要です。普段の山歩きの中で、ここでパートナーを補助するとしたらどうするかをイメージする訓練が、いざと言う時に役に立ちます。

 この方法は、常に支点より下で行動する場合のみに使用します。

 この他に岩稜を歩くときにプロガイドが行うロープを結び合ってのコンテニアス技術がありますが、高度な技術と的確な状況判断等が必要ですので、絶対に真似をしてはいけません。

Y その他

鎖場等をある程度の安全を確保しながら、登る方法です。ヨーロッパアルプスではヴィラ・フェラータと呼ばれるルートがイタリアのドロミテを中心にあります。これは、梯子やワイヤーロープ等が設置された岩峰や岩稜をハーネス、カラビナ、専用のスリング(ランヤード)を使い安全に楽しもうとするものです。

 日本でも鎖場や梯子が設置されているコースがあり、この方法が有効と思われます。しかし、日本の場合ヴィラ・フェラータを前提にコース整備されているわけではありませんで、そのまま取り入れる事が出来ません。鎖場に設置された鎖の輪にカラビナが入る場合や、仲間がフィックスしたロープを利用して登る場合等には有効な方法です。注意点は、大きな衝撃(大きな墜落)がかからないようにするため、こまかくカラビナの架け替をする必要があります。この事は、重要です。


追 記

 末端処理について 
  ●    結び目に密着させて末端処理を結ぶ。
       末端はロープの径の少なくとも10倍以上出す事。

「教わった事は必ず忘れる」と言うのが、どの世界にあってもよく言われる法則です。教わった技術をうのみにしないで、必ず検証しながら繰り返し練習して身に付けて下さい。また、完全な技術は存在しません。その技術の長所、短所を理解して身に付ける事が需要です。













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