早月尾根経由剱岳から剱沢雪渓を下り裏剱縦走

2009年8月17日(月)夜発〜22日(土)【第238回プラスワンハイク姉妹編】

参加者  古川太亮(リーダー・P1ハイク主催者・野火止山の会)、 高橋(記録)
門司(野火止山の会)、長田(一の谷Base)、渡辺(綺)。

行程 17日(月)  品川19:49→19:56東京20:12→とき347号→大宮駅20:36→21:21越後湯沢乗換21:30 →はくたか26号→23:26富山駅→(徒歩3分)→富山駅前ホテルオカムラ【076-433-3830、素泊まり3500円】

18(火)晴  ホテル5:30→富山駅6:33→(富山地鉄076-432-5546)→6:56上市→【旭タクシー0764-72-0456、8800円】→7:30馬場島着8:00〜(早月尾根)〜15:25早月小屋着【090-7740-9233】 

19日(水)晴  小屋(標高2224m) 5:15〜2614m8:00〜9:402999m 10:40〜前2813m13:35一服2618m〜剣山荘14:05〜14:40剱沢雪渓15:00〜16:25真砂沢ロッジ(標高1750m)【090-5686-0100】

20日(木)晴  ロッジ6:30〜8:15二股吊橋8:20〜9:30展望台1865m〜11:00仙人峠2140m・展望台〜11:40池ノ平小屋2050m〜平の池周回〜池ノ平小屋12:5013:20仙人峠13:30仙人池ヒュッテ13:40〜15:45仙人温泉小屋【090-4072-3996】

21日(金)小雨  小屋(標高1590m)6:25〜仙人ダム9:00〜11:10阿曽原小屋(標高850m)11:55〜12:50水平歩道南端(標高950m)〜14:20折尾大滝〜15:00大太鼓展望台〜関電トンネル(150m長)15:45〜大太鼓展望台〜16:40水平歩道北端(標高950m)16:50〜欅平ヘアピンカーブ(標高858m)〜17:35欅平駅(標高550m)→(迎車)→17:45名剣温泉【0765-52-1355】

22日(土)晴  温泉宿9:40→欅平10:01→(1660円、黒部峡谷鉄道0765-62-1011)→11:15宇奈月12:07→(富山地鉄)→12:44新魚津→12:40魚津で昼食(地魚料理「満更」0765-24-2626)→JR魚津14:06→(はくたか17号)→15:56越後湯沢16:08→(Maxたにがわ418号 始発)→17:14大宮→17:40東京


経費  小屋50000、交通30000、他5000。
縦走コース(昭文社の地図参照)
山行記 (会報原稿とは別に写真を多用)
野火止山の会の古川氏から「第238回プラスワンハイク姉妹編」のメールが届いた。古川氏は労山海外登山隊(隊長近藤和美氏)として5月19日マナスル(8163m)登頂を果たされた。70歳8カ月マナスル登頂は最高齢の記録となるようだ。マナスル「精霊の山」はチョモランマから西側200kmに聳える山で日本隊が1956年5月9日初登頂した八千M峰として知られている。
私はいつか剱沢雪渓から裏剱を歩きたいと思っていた。でも早月尾根剱立山コースを2006年8/10-12に歩いていて、今回また早月尾根から入るのはしんどいし、坐骨神経痛?で歩き通す自信がないし、職場の夏季一斉休暇後になるし と迷ったが、行きたい気持ちが勝って参加させていただけることになった。7月例会で同じメールを受け取っていた福井さんに裏剱の話をしていたら傍にいた渡辺さんにこの山行の参加を頼まれる。福井・渡辺の両人は2006年10月8日古川氏の「プラスワン万葉花ハイク」に参加している。山行パーティの東京在住4人で8月1日秩父伊豆が岳男坂に訓練に行く。私は話題の映画『剱岳 点の記』を娘と観に行き、『仲間』という言葉に深い印象を持つ。明治40年(1907年)7月13日陸軍陸地測量部(柴崎芳太郎ら)が宇治長次郎をガイドに長次郎雪渓から登頂し四等三角点を設置するが、山頂に錆びた錫杖を見つけた。山岳会は2年後1909年同じく長次郎雪渓から登頂した。




前夜(8/17)

ザック基本9.5kg+野菜ジュース1kg+食糧2kg+緑茶0.5kgで荷物は13.0kgとなった。これに明日水1kgが入る。軽めのザックを買ったのだから全部で10kgになるよう工夫が必要だ。

11時40分「富山駅前ホテルオカムラ」に入り急いでシャワーを浴びて寝につく。
初日(8/18)
早朝5人が顔合わせを済ませ剱岳裏剱の4泊5日山行の長丁場に向かう。野火止山の会に所属している門司氏(70歳)は省エネコンサルタント業(代表)のかたわら3年前コスタリカ工科大学で2年間JICAの「エコエコアクション21」を指導された経験を持つ。日本野鳥友の会の元東京支部長で毎月2回高尾山等で野鳥観察会を主催されている。

長田氏(63歳)は三重県桑名市在住で建設業をリタイアして、桑名市民ハイキングを主宰し、御在所麓菰野町湯ノ山温泉一の谷に山荘「一ノ谷ベース(荒火庵)」を持つ。古川氏の友人で山スキーの名手である。我々5人は平均年齢66歳だ。

馬場島登山口の祠や観音像を見てから、古川氏をトップに早月尾根に取り付く。30分毎に休みが入り私でも何とか付いて行けてありがたい。野鳥のさえずりも多く門司氏の解説が入り面白い。門司氏によると『剱岳 点の記』のオオワシの映像はトンビなのだと言うから「そうなのか」と笑ってしまった。

高度が2000mくらいになるとガスが上がってくる。7.5時間かけて早月小屋に着く。小屋の前で早速ビールを飲みながら小窓尾根を眺めゆったりした時間を過ごす。ハンバーグカレーと煮付けなどの夕食。眼下に拡がる雲海。温もりのある色彩の夕陽が沈む。今日明日の山行は馬場島〜(標高差1460m:水平距離4.9km:歩行5.2km)〜早月小屋〜(標高差780m:水平距離2.2km:歩行2.4km)〜剱岳(標高2999m)だ。
2日目 (8/19)
朝食を弁当にして貰い、シラビソの樹林帯の急登を行く。トリカブトやマツムシソウの群生が見事で目にする景色は前回3年前と異なる。体が重かったので小窓尾根のドームやマッチ箱が水平の視線に入るとやっとここまで登ったかと嬉しくなる。ピークまで距離0.7km地点で小窓の王が見える。カニノハサミにあった前回のボロのロープはすべて鎖に付け替っている。岩稜を超えると剱岳山頂で三等三角点にタッチする。登り4.5時間。靄っていて富士山や富山湾は見えないが笠槍穂高など素晴らしい眺望を楽しむ。
門司氏は膝の打撲により大事をとり剣山荘泊まりとなる。ここから花畑を下る。私は剱沢雪渓に乗る直前のガレ場で落石を起こすまいとして転倒して、左膝を捻ってしまう失敗をおかす。危険はちょっとした所に落とし穴のようにあるものだ。源次郎尾根の奥に八ツ峰岩峰が大きく聳え素晴らしい眺め。左に見えてくるのは長次郎雪渓で、映画「剱岳」もこの沢で撮影したらしい。シュルントに寄らないように注意を受ける。乗って落ちたらと思うと怖ろしい。
一の沢の近くでアイゼンを脱ぐ。右手に見えるクレバスやスノーブリッジが不気味である。剱岳から標高差1200mを下りてきて真砂沢ロッジに午後4時半着。小屋は古いがありがたいことに風呂釜のある簡易浴室があり、体に湯をかけ流すだけだが、汗を洗い落とせてさっぱりする。水が豊富なのでトイレも臭わない。今夜もカレーだが美味しくお腹一杯。デザートのフルーツゼリーは明日の分に取りおく。
4人とも寝坊して朝食後1時間遅れの6時半に真砂沢ロッジを出る。今日は10時間近い行程だ。剱沢南股の河原に沿って下る。地味な紫のミソガワソウがニョキニョキ生えている。四の沢を過ぎるころ朝陽が黒部別山の端から顔を出す。二股吊橋から高度600mの登り返し。左の沢が「北股には入るな」と指導員に言われた道らしい。


3日目 (8/20)

右の仙人新道を行く。仙人峠までの登りはきついが何と言っても急峻な八ツ峰の展望が良い。自分の体調も良い。好天でよかったよ。登山道にアカモノの実(イワハゼ)が多いが食べられるとは聞かないのは残念だ。20センチくらいの草丈で紫の花をつけた花があちこち咲いている。帰京後調べたらママコナだった。

仙人峠にザックを置いて展望台に寄り、雲ひとつない剱にたっぷり見惚れる。クロウスゴの藍色の実をついばみクエン酸を補給する。池ノ平小屋まで下りる。池ノ平小屋の正面に針の木岳とスバリ岳が見える。平の池(剱池)を周遊して逆さ剱を見て感激する。池溏にキンコウカ・イワショウブ・イワイチョウ・チングルマを目にするがもう花はほとんど無い。小屋から八ツ峰の6峰7峰下部の雪渓が『モンローの唇』に見える。今年残雪少なく不完全な形だそうだ。小窓の王の全容も見える。ここまで来れて良かった。
小屋の西に池ノ平山2561mの草地斜面が広がり、そのピークは昨年10月に登った赤谷山に続く。小屋裏手に廻ると白ハゲの巌がそびえて見応えある。開けた北側は小黒部谷に落ちこみ遠くに毛勝山。紅葉の頃、別の剱岳の姿が見えそうな池ノ平山を小屋からのんびり往復するのも楽しいと思う。

仙人峠まで戻るが空身なのですごく楽である。仙人池ヒュッテに下る。仙人池に映る八ツ峰は平の池とはまた違う趣である。仙人池ヒュッテを出るとき小屋守の80歳を超える女性に「ゆるゆるの下りですよー」と言われたが、どうしてどうして2時間の結構な仙人谷下りである。沢水で顔を拭い首筋を冷やすと疲れが退く。タテヤマウツボグサの濃い紫に目がひきつけられる
この谷は両サイドに大きく開け明るい谷で、私の気に入る。でも再び訪れることは残念ながらないだろう。谷斜面にオタカラコウの群生やオオレイジンソウなど花も多く素晴らしい。正面に後立山連峰をみて気持ち良く下る。道は崩壊している個所もあり悪いからそれなりに緊張感は要る。右岸の湯煙を目にして30分後にやっと左岸にある小屋に届く。赤ペンキの『おつかれ様 仙人温泉』の大きな岩標識が迎えてくれホッとする。渡辺さんと露天風呂(女)に直行する。針の木岳を見ながら談笑する。正面の鹿島槍は雲の中。夕食は山菜天ぷら・岩魚甘露煮など山の幸で食欲をそそる。私は朝食を押し込むように何とか食べるのだが夕食は箸が進む。食堂が別棟なので自然と流れは酒盛りとなる。小屋オーナーのギターで「禁じられた遊び」が宵闇の秘境に流れる。オオスズメバチ焼酎漬や蝮酒が体にも傷口にも効く?のだとか。蝮酒はチラッと見るだけで結構だ。「蝮は多いの」と訊くと、小屋オーナーが乱獲してこの辺りの蝮は少なくなったとか? それでもたまに捕りに行くと1日2匹捕れると言う。
蝮の刺身500円には興味があったが予約済みで食せない。そういえば去年の祖母谷温泉小屋でも2Lペットボトルに入れた蝮を水に漬けて泥抜きしていたっけ。そうすると泥臭さが抜けおいしい蝮酒になるのだと聞く。夜8時半、満天の星空に夏の大三角形の星座がキラキラ輝くが、予報では明日の天気は崩れる。

4日目 (8/21)
小屋から雨具着用で出発する。1629m尾根頂上まで快適な道である。阿曽原峠を経る下山道が廃道になり20077月開通の雲切新道を下るがすごい悪路だ。別に難しくはないが気が抜けない。ここで目にするホツツジは花もつぼみも純白である。ヤマハギが満開で山は秋の花に取って代わる。「仙人池まで急登」の標識を過ぎる。登りも下りも大変だ。遠くの山肌に地下関電施設の2本の巨大なトンネルが見えてくる。急降下の雲切新道から仙人谷ダムを見下ろす。これは戦前建造したらしいがよくこんなところにダムを作るものよと思う。戦後の高度経済成長を下支えした電力だが、戦後にできた黒部ダムは殉職者が171人にも及んだらしいから現在なら許されない数であろう。黒四ダムはここから直線距離で10km以上も上流にある。山中を貫くトンネルは欅平から黒部湖まで17.5kmと聞く。
ダム施設で30歳前後の女性が働いているのに出会う。軌道が走っていて長田氏が乗りたいと冗談を言うと縦坑に行くレールだと言う。外目よりはるかに巨大な管理設備が山中にあるようだ。建物を出てからすぐ短い登りになる。。「仙人池まで急登」の標識を過ぎる。登りも下りも大変だ。遠くの山肌に地下関電施設の2本の巨大なトンネルが見えてくる。急降下の雲切新道から仙人谷ダムを見下ろす。これは戦前建造したらしいがよくこんなところにダムを作るものよと思う。戦後の高度経済成長を下支えした電力だが、戦後にできた黒部ダムは殉職者が171人にも及んだらしいから現在なら許されない数であろう。黒四ダムはここから直線距離で10km以上も上流にある。山中を貫くトンネルは欅平から黒部湖まで17.5kmと聞く。ダム施設で30歳前後の女性が働いているのに出会う。軌道が走っていて長田氏が乗りたいと冗談を言うと縦坑に行くレールだと言う。
外目よりはるかに巨大な管理設備が山中にあるようだ。建物を出てからすぐ短い登りになる。戦後にできた黒部ダムは殉職者が171人にも及んだらしいから現在なら許されない数であろう。黒四ダムはここから直線距離で10km以上も上流にある。山中を貫くトンネルは欅平から黒部湖まで17.5kmと聞く。ダム施設で30歳前後の女性が働いているのに出会う。軌道が走っていて長田氏が乗りたいと冗談を言うと縦坑に行くレールだと言う。外目よりはるかに巨大な管理設備が山中にあるようだ。建物を出てからすぐ短い登りになる。
阿曽原小屋に着いた途端雨がひどくなる。小屋でうどん等を注文してエネルギーを詰め込む。小屋から関電鉄塔までの登りで標高を上げ水平歩道に入る。次々と山腹を水平に延々とトラバースするのだが、「登りも急降下も辛いけど水平道もイヤ」って感じになる。紅葉の時期も絶対に歩きながらの景色鑑賞は危険に思うので「下の廊下」も全部歩きたいが思案してしまう。折尾大滝や右手の奥鐘山の岩壁が見応えあり。折尾大滝でシナノナデシコを見る。足元にはたまにミヤマリンドウが花茎の先に2−3輪の可憐な花をつけている。黒部川は遥か下に流れる。断崖に咲く樹木の白い花にはノリウツギもあるようだ。
大太鼓展望台を過ぎると欅平駅のマイク放送が聞こえてくるようになる。晴れていると角度によっては駅舎が見えるらしい。嬉しい!まもなく下降路に入るのかと思うのはぬか喜び。放送が聞こえてきてから先が長い。まだまだ水平歩道が続くのだ。展望台から欅平駅まであと5.4kmある。花を愛で、峡谷に聳える奥鐘山の岩壁をすごいなあと鑑賞し、お喋りしながら歩くしかない。
聞いても無駄なのを承知で、長田氏に山スキーの上達法を聞いたりする。志合谷150mトンネルをヘッドランプを点灯して通過する。次に小さなトンネルを抜ける。水平歩道終点からちょっと下がると地図上の欅平で、そのヘアピンカーブからジグザグの道を辿り17時35分に欅平駅に到着する。ずっと緊張を強いられけっこうな歩きとなるが水平道で体力の消耗が少ないせいか不思議と元気になる。計画では10.5時間だが、今日は欅平駅(標高550m)まで11時間かかる。
さすがに疲
れはしたが何とか歩き切ったぞ!
楽しく歩けて満足!
欅平名剣温泉ではザックカバーから雨具やズボン等濡れた物一切を洗って乾燥してくれる。ひと風呂浴びて、無事歩き通せた喜びの祝杯を挙げるべく、おいしい夕食の卓につく。

5日目 (8/22)
古川氏の足の速いのには驚きだが、チームワーク宜しく念願の裏剱縦走ができて感慨も一入です。仲間に、自然に、天候に感謝です。皆の満足した笑顔を乗せてトロッコ電車が山峡を走ります。


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