西穂高〜ジャンダルム〜奥穂高 縦走

○日 程 :2017819日(土)〜21日(月)

○メンバー :L渡辺(美)、堤、吉岡、金子貴代(記)

○コースタイム:
【一日目】8/19 (7:15発新宿からの高速バス利用)12:20上高地帝国ホテル前着〜
             12:46
西穂高方面登山口(田代橋)〜17:00西穂高山荘着

【二日目】8/20 4:10西穂高山荘〜5:23西穂高独標〜7:00西穂高岳〜8:45赤石岳〜9:22逆層スラブ〜
             9:42天狗の頭〜10:23天狗のコル〜12:27ジャンダルム〜14:15馬の背〜14:35奥穂高岳〜15:20穂高岳山荘

【三日目】8/21 6:10穂高岳山荘〜ザイデングラード〜8:16涸沢ヒュッテ〜10:39横尾〜徳沢〜明神〜
             13:36
小梨平(入浴)~16:15発高速バス利用(21:00新宿着)

 

●出発前:今回の山行は天気がいいことが絶対条件。事前に複数のサイトで天気予報を確認する。縦走予定日の日曜日は曇りマークとなっていたが、週間天気図を見ると高気圧も近くにあり、好転しそうな気配もある。メンバーで相談した結果、西穂高岳まで行って現地で判断することになった。リーダーから「決行します」のメールがきたあとは、岩場のことを考えるだけでドキドキが止まらない。出かける前からこんなに緊張して大丈夫だろうかとかなり不安になった。

 

 8/197時に新宿バスタに集合して高速バスに乗り、お昼に帝国ホテル前に到着して西穂高山荘へ出発。

ガスが多めだが雨は降っていない。1日目は明日の縦走に備え体を動かす予定だ。すれ違うグループが「今日ジャンダルムに行く予定だったがガスが濃すぎて断念した」と言って下山していった。途中パラパラ雨が落ちてきてザックカバーを取り出すもすぐやんでしまい、コースタイム通りに4時間ほどで西穂高山荘に到着した。今日は布団2枚で3人とのこと。夕暮れ時は雨がぱらついており、山荘内のテーブルコーナーは満席であったが隅に4人の席を確保してビールで入山祝いをした。

夕食時に、山荘の主人が気象予報士であることから明日の天気予報を詳しく解説してくれた。ガスは多めだが天気は良くなりそうとのコメント。この時点では縦走できるかどうかは、まだ半信半疑だった。もし天気が悪ければ西穂高岳に登った後に焼岳に行ってから下山しようとチーム内で話し合って、20時には就寝した。ところが部屋の中がとても暑くてぐっすり寝られない。部屋のドアを開けると涼しくなることに誰かが気が付き、そこからやっと熟睡できた。やれやれ。

 8/20:いよいよアタック当日。3時に起きる。小屋のテーブルには暗い中で早朝に出発するたくさんの人が準備している。ジャンダルムに行く人達だろう。よくよく観察するとバリバリの若者風から中高年もおり、色々な人がいる。周りを見ると少し気持ちに余裕ができて不安が薄らいだ。外に出ると風もなく満天の星。ヘッドランプを付けて歩き出す。

 西穂高独標まではごつごつした急登の岩場をあがる。我々さんかくてん女子チームは、今回は「体力温存」と「安全」を最優先するために決して焦らない。自分たちのペースを守り黙々と歩く。独標まで到着する頃には空が明るくなり格好の良い笠ヶ岳の峰々が一つずつくっきり見える。ここから崖の急降下がはじまるのでヘルメットを付ける。

笠ヶ岳がはっきりみえる

 

堤さん以外は西穂高に初登頂!

 

岩場は少し湿っているが問題はない。7時に西穂高岳に着いた。岐阜県側も見える限り雲がなく快晴だ。「今日ジャンダルムに行かなかったらいつ行くのか」という晴れだ。縦走は出来そうである。改めて覚悟を決める。

 

赤岩岳の手前に長い鎖のついた垂直の崖が現れる。旺文社の地図では危険マークがついているところだ。美知子さん、綾乃さん、堤さん、金子の順番で慎重に足を運ぶ。しっかりとした足の置き場、手の置き場はあり、高度感はすごいが安定して降りることができる。
危険印のあった崖。後ろ向きで降りる

 

 

逆層スラブ全景。

 

間ノ岳のあたりで逆方向からきた単独の男性に会った。3時に出発したとのこと。逆層スラブが一番怖かったと聞いた。

逆層スラブでは先行者2人組の登り方を観察した後で、鎖を使いながらよじ登る。乾燥しているので滑らないが、鎖がないと登るのは厳しい斜度だ。

 

続く「天狗の頭」で小休止して、「天狗のコル」方面へ下る。このあたりでガスが増えてきたが、前方の崖は確認できるので危険はまだない。ここも垂直の崖を慎重に下る。岳沢へのエスケープルートへ続く道があった。10時だ。やっとこのあたりで中間地点だが、この後もさらに難易度があがる難所が続くということで、緊張はより高まる。

 

つづく「畳岩尾根の頭」までひたすら岩場を下ったり登ったり。急に方向を示す○印が少なくなったようだ。先行者もずっと先を行ってしまい見えないため、美知子さんがルートを探しながら行動を続ける。
緊張を強いられる岩場がつづく。
怖かったジャンダルムへの登り

 

時間も経過し、なかなか着かなくて心配になりかけたところ、いきなり次の岩山の上に黒天使が見えた!「黒天使だー!!」皆から大きな声がでる。畳岩尾根の頭は気づかずに通り過ぎ、「コブ尾根の頭」に着いたようだ。


しかし、ジャンダルムに登るルートが○印がなく不明瞭。ああだこうだ4人で意見を言ってみるが進むしかない。鎖場には金属製の杭のようなものが足をおくステップとして設置してあるが、下向きになってしまっていて、すべりそうでとても怖い。その後は岩を大きく左に回り込んでから上っていく。印もないのに的確なルートを選択する美知子さんのファインプレーが続く。岩を登り切ると黒天使にやっと会えた。

 

黒天使はおもったよりだいぶ小さくて小柄な天使である。あいにくガスが立ち込めているが気持ちは晴れ晴れ。それぞれ写真撮影をした。ジャンダルムからの下りはとてもはっきりしていて、上るのと下るのは同じ道でもまったく印象や難易度が違うと思った。

黒天使の前で気持ちは晴れ晴れ

 

 

ジャンダルムの後は「ロバの耳」「馬の背」と今回の最難関ではないかと思う怖いところ。足先しか置き場がない崖のトラバースや、足を大きく開いて置き場を探す斜めの岩場、浮石が多く落石の危険がありそうな箇所など、いくつも通り抜けた。

今回の縦走ルートのクライマックス、「馬の背」のナイフリッジは、私は怖すぎてへっぴり腰の四つ這いでヒーヒー言いながらなんとか進んだ。

おもしろいもので、私はナイフリッジが一番怖いと思ったのだが、綾乃さんは崖のトラバースが怖いと言っていたし、堤さんはジャンダルムの下向きの金属の杭の場所が一番怖かったと言っていた。人によって感じ方がずいぶん異なる。
馬の背へ向かう。一番の緊張個所

 

穂高岳山荘で喜びを表します

 

「馬の背」を過ぎると奥穂高岳はすぐ目の前。ガスも少し晴れてきてジャンダルムも見えるようになった。奥穂高岳側からみると、ほんとに要塞の形をしていてかっこいい。奥穂高岳でも記念撮影をしてから山荘を目指す。山荘直前にある鎖・梯子も慎重に歩き、ようやく到着。

「ヤッター」とハイタッチで喜ぶ。緊張が解けたことと、やりとげた達成感で目がじんわりした。山荘では悠々とひとり一枚の布団で熟睡だった。

 

8/20

本日も朝は快晴。ザイデングラードを下るが、たくさんの登山者で渋滞気味だ。途中からパノラマルートを選び、絵のような青空、穂高の山並みとお花を写真に撮りながら雪渓を楽しく歩いた。横尾、徳澤、上高地を経由して予定通りバスに乗車。
帰路、涸沢より穂高連峰を振り返ります

 ●まとめ 
今回の縦走を総括してみると、一番の難しさは個々のルートではなく、緊張しっぱなしの岩場の上り下りが最初から最後まで(しかも後半がより厳しい)何時間も続くところではないかと思った。また、鎖がついている斜度がきつい個所は、それほど危険は感じなかったが、むしろ鎖がなく、ガイドがロープを通すための支点だけがある崖が5-6所かあり、そこは手足をかける場所が小さく落ちそうで怖かった。落石については、浮石はあるものの、慎重に足を運べば問題なかった。今回は落石で危険な思いをすることは一度もなかった。

成功要因についてはいくつかあるが、まずは天気。最初快晴でのちにガスが出て日光が弱くなった。風も弱く体力温存のためには、これ以上ないくらいの好条件だった。次に美知子さんのよいルートファインディング。おそらく落石の危険を感じなかったのは上手なルート選択で、多くの登山者が通った浮石の少ない道を歩くことができたからではないだろうか。最後にメンバー全員の心身の充実。急がず慌てず一定の調子を守って慎重に行動し、何時間も緊張を持続することができた。体力的にも問題がなかった。また、個人的には、今年は沢歩きの機会に恵まれ、事前に3回参加していたが、沢歩きの歩き方が岩場で非常に役に立っていると思った。沢歩きは基本的にぜんぶが浮き石で、苔が生えている岩はつるつる。そのためどうしても一歩を歩くのに慎重になる。不用意に足を出すと転んだりする。その歩き方が自然と身について不安定な岩場歩きもスムーズにできるようになっているのかなと感じた。

最後に同行していただいたリーダーの美知子さん、堤さん、綾乃さん、本当にありがとうございました!ひとりでは絶対にできなかったことをチームの力で達成できました。本当に貴重な機会になりました。

見た花
ソバナ、カニコウモリ、サンカヨウの実(食べてみる)
ゴゼンタチバナ、トリカブト(白)、イチヤクソウ、
アオノツガザクラ、トウヒレン、チングルマ、
ハクサンイチゲ、ハクサンフウロ、シモツケソウ、センジュガンピ

 

 


































































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