気象予報士・野尻栄一氏を講師に迎えて

気象ハイキング・今倉山〜二十六夜山

日 程:20191130日(土)

参加者:講師・野尻栄一氏、佐藤(L)、福井(SL)、桑村、松尾、渡辺(絢)、堤、関山、吉岡、松平、上野、蔦(記)

コース:道坂隧道バス停(1015m)9:009:20〜今倉山(1470m)10:25〜西が原10:55〜赤岩(1450m)11:2512:00〜林道(1235m)12:57〜二十六夜山(1297m)13:20〜仙人水14:20〜林道合流(625m)15:00〜芭蕉月待ちの湯バス停15:40頃到着

 

冷え込んだ雲一つない冬晴れの朝、8:10都留市駅前に本日の講師・野尻氏と参加者全員が集合、

リーダーが手配してくれた大型タクシーと8:15発の登山バスに分乗して今倉山登山口のある道坂隧道バス停に向かいました。



登山口のある道坂峠トンネル前の駐車場で、ストレッチ、記録決めの後、本日の気象ハイクにお迎えした野尻講師による本日の予想天気図についてのレクチャーを受けます。





昨日までの大陸の寒気が抜け、日本海に高気圧が張り出し終日安定した晴天が期待できるとのこと。久しぶりに青空のもとでの山行になりました。

登山口で野尻講師による本日の天気予報講習

 

 

 

佐藤リーダーを先頭に、トンネル脇の登山道に入ります。いきなりの急な登りで12名の長い列が、先頭グループと後方グループに自然に別れ上り開始になりました。

 

道坂トンネル脇の登山口より、薄っすら雪の積もる登山道を今倉山を目指しました。


 

20分ほどで道坂峠、背後に大きな御正体山その後ろに真っ白な富士山が現れました。

山はすっかり木々が葉を落とし冬木立に変わり、落ち葉に覆われた山道の随所には霜柱が、1300m辺りからは所々に雪が残っていました。

雪道が続きます

 

 

1時間ほどで今倉山に到着です。山頂も、山頂から西へのびた明るい稜線の登山道にも2〜5p位の積雪がみられます。

 

今倉山頂上は雪が解けずに残っていました。


 

2728日にかけて雪が降り、29日の低温で、溶けずに今朝の景色になったとのこと。

乾燥した柔らかい雪は踏むときゅきゅと鳴りますが、落ち葉や石が雪で覆われているため注意して歩きます。

今倉山西峰の岩稜帯の下り。木や岩に掴まりながら下りました。

 

 

富士山を常に左方に見ながらいくつかのピークを越え都留一番の展望が望める赤岩(松山)に到着しました。

 

赤岩から。雲一つない富士山。昼頃から雲が現れ始めました。


 

富士山を、相模湾、南アルプス、八ヶ岳、北アルプスの一部、奥秩父の山々、東京の高層ビル群と360度の眺望が待ってました。風もなく柔らかい冬の陽を浴び、ゆっくり昼休憩を楽しみました。

赤岩山頂で野尻講師を囲んで記念撮影です。

 

赤岩山頂から南アルプス連山 聖岳〜赤石岳〜荒川岳〜塩見岳の展望を楽しみました。


 

赤岩からはいくつかのアップダウンを繰り返す急な下りが続きます。途中、空気が暖かく感じられるようになり、富士山の肩のあたりに小さな白い雲の塊が現れていました。

いったん、林道に下ります。


 

稜線から一旦林道に下り、二十六夜山へ向かいます。

緩やかな上りの先が二十六夜山、20分ほどで頂上に到着しました。このころには、白い綿雲があちらこちらに現れ始めていました。

二十六夜山山頂で最後の富士の大展望を楽しみます。

 

 

 

二十六夜山からの富士山には雲がかかってきました。

 

二十六夜山の石碑と由来 二十六夜待ちは旧暦の1月と7月の26日に行われる夜月待ちの行事、花の百名山等を書いた看板

ちなみに、ここは、道志二十六夜山。同じ道志山塊の中に秋山二十六夜山もあります。山名は、いずれも旧暦の正月と7月26日に月が出るのを待って拝む二十六夜待ちの行事に由来しているとのこと。大きな石碑が設置されていました。

 

上戸沢への下りは、長い急な尾根下りです。下り始めてしばらくすると、雪がなくなり、樹林帯のジグザグの急下り一気に矢名沢に下り、

沢添いの道を30分程下って、15:00林道合流地点に到着。林道合流から戸沢集落を抜け、芭蕉月待の湯へと向かいました。

二十六夜山の急な下りから沢沿いの道を対岸に渡り、林道も近いです。今年の秋の二つの台風に負けず、橋は生きていました。

 

都留市巡回バスの最終が18:32。それまで、ゆっくりと入浴し食堂で歓談を楽しみました。

「空を見るだけが気象ハイクではない」と、自然現象等その都度丁寧に解説をしてくださった野尻講師、適切なコース選択をしてくださったリーダーの佐藤さんありがとうございました。尚、野尻講師より、当日の気象状況を「トッピクス」にまとめ分かりやすく解説して頂きましたので同時に掲載させて頂く事になりました。(記・蔦)

 




気象ハイクで講師をして頂いた野尻気象予報士より投稿を頂きました

今倉山気象ハイクの気象20191130日)

野尻 栄一

 天気に恵まれ晩秋(初冬?)の雪山を楽しめました。雲はあまり出ませんでしたが、「気象観察は雲だけではない」というわけで現地での話に少し話題を加えてみました。

山は天気予報も大事ですが、同じくらい過去数日の天気が大事なので、まず山行前数日の天気の流れを振り返りたいと思います。

22日〜から雨模様が続き、

28日木曜は気温がぐっと下がり冷たい雨になりました。

29日は晴れて気温がさらに下がりました。 

下表が大月アメダスとつくばの高層観測データです。

 

 

26

27

28

29

30

大月

アメダス

最高気温

10.5

12.5

9.3

8.4

11.3

最低気温

5.1

5.1

2.8

-0.8

-2.2

雨量

2.5mm

0.5mm

7.0mm

0.0mm

0.0mm

つくば

高層観測(21)

高度1000

1.9

9.4

-1.5

-0.1

3.4

湿度63%

100%

73%

46%

75%

高度1500m

2.4

6.3

-4.8

-4.2

0.3

28日は気温の観測データから山は雪で、積雪量は大月の雨量から推定して多いところで10cm程度と思われます。

29日は晴れたものの気温が低く雪はあまり溶けず、

30日は軽い雪山歩きになりました。

 

天気図を見ると

29日は西高東低の冬型で、真冬並み寒気の上空約5000-24℃の等温線が本州南部まで南下しました。

30日は高気圧が日本海に入り、寒気も東に抜けました。


では、当日の気象の話題です。
(1) 朝、電車に乗り立川を過ぎると、霜が一面に下りていた。

霜がおりるときは最低気温が約3℃以下で風が弱く晴れた朝です。東京の朝の気温は5℃ですが八王子は-0.2℃で、中央線で西に行くにつれて霜がおりる条件になりました。寒気は抜けても暖かくなるのは太陽が高くなってからで、「寒い日の翌朝はもっと寒い」です。
(2) 高度1000mくらいから積雪があった。

私は山では02℃が雪と雨の境目だと考えています。28日の高層観測では高度約1000mで朝9時が3.0℃、21時が-1.5℃なので、1000m以上ではだいたい雪になったと思います。29日は湿度が低く、雪が乾いてさらっとした感じになりました。道も乾いてぬかるみも少なく、わりと歩きやすい山道になりました。
(3) とにかく眺めが良かった。

雨で空気中のほこりが落ち、29日の冬型気圧配置の風で空気がきれいになっていました。赤岩からは相模湾の海や北アルプスまで見えました。
(4) 赤岩から眺めた空と雲、山、海など振り返ってみました。

(5)二十六夜山を下りる頃、まわりで小さな積雲がたくさんできた。

これは、太陽により地面が熱せられた空気が上昇することでできる積雲で、晴れて日差しのある証拠なので「晴天積雲」と呼ばれています。縦走中に暖かい場所と比較的気温が低い場所があることに気が付きましたでしょうか。これは、山の斜面の角度や状態により太陽熱の受け取りやすさに差があるためで、それにより暖まり方にむらができますので、上昇気流ができる場所にもむらがあり、小さい雲があちこちにできます。冬は地面が暖まるまでに時間がかかるので、雲は昼や午後になるにつれて増えてきます。道志、都留のあたりは小さい峰が多く、風が弱いときは山の山頂は太陽光を朝から浴びて暖まりやすいので、雲のある場所はだいたい山の山頂に対応していたように思います。枯れた木々の間ごしに、さっき越えてきた今倉山の上にもかわいい雲ができたのが見えました。

好天に恵まれた30日の気象ハイクでしたが、もっと広い範囲の雲の様子はどうでしょうか。

私たちが赤岩で大休止した頃にあたる1130分の気象衛星画像です。北陸より北の日本海には季節風の筋状の雲があります。大平洋は東北沖から沖縄近海まで季節風の雲が多く、われわれは狭い晴天域の中にいました。

今倉山から二十六夜山の尾根からの見える範囲にはほぼ雲がなく、山から見えた箱根や伊豆半島の上の雲や富士山にかかる雲も小さすぎて気象衛星画像にははっきり写っていません。静岡から遠州灘にかけて右斜め下向きに橋のように延びている雲がありますが、調べてみると関東平野からの季節風と関ヶ原からの季節風がこの辺でぶつかっていたので、空気がぶつかって上昇することでできた雲だと思われます。

また、この時間は日本海の中部に移動性高気圧の中心があります。天気図と衛星画像を見比べていただくと、高気圧の中心の東側では日本海に季節風の雲があり、中心の西側は雲が消えています。このように、冬季の日本海側の山では移動性高気圧が近づいてきても晴れず、中心が通り過ぎる前後に晴れてきます。冬山での気象判断のコツのひとつです。
(ただし、高気圧の中心が過ぎると次の低気圧が近づきますので、気象情報を聞いていつまで晴天が続くと期待できるか、正しく判断をすることが大事です。)

 

日本列島太平洋側を拡大すると遠州灘からの雲と関東からの季節風がぶつかり上昇する雲の筋が見えます

 

赤岩からはほんとうに雄大な大展望が楽しかったですが、カシミールで赤岩から見える範囲を計算させてみました。

海は相模湾で、見えた島はやはり大島だったようです。箱根の神山も見えるので、山の中腹の煙はやはり大涌谷の噴煙だったと思います。箱根はこのところ大涌谷でしばしば小規模な噴火が起きていますので、噴煙が多かったのかもしれません。南アルプスは甲斐駒、鳳凰から光岳の南まで主稜線が全部見えています。八ヶ岳と甲斐駒の間から北アルプスが見えています。カシミールの計算からは穂高は見えている感じですが、槍ヶ岳はやっぱり見えなかったのではないかと思います。八ヶ岳の手前の茅ヶ岳が邪魔をしています。カシミールでは日光連山や筑波山も見えることになっていますが、富士山と南北アルプスに心を奪われて気がつかなかったのが残念に思います。























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